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もくねじ
もくねじ
海野 十三
「譚海」1943(昭和18)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,546 字 · 16 页
その震動は、ぼくのところまでもきびしく響いてきた。
「おや、これはいけないぞ!」
ぼくは気がついた。たいへんなことが起りかけた。ぼくの身体が、穴から抜けそうである。
あんまりがんがんやるからいけないのである。基礎がちゃんとうまく出来ていればよいのに、それが寸法どおりいっていないものだから、ハンマーをがんがんふるわなければならないのだ。それは全くよけいな心配をぼくにかける。いや今となっては、単なる心配ではない。ハンマーがガーンと鳴るたびに、ぼくの身体は穴からそろそろと抜けていくのであった。
「おい、ねじが抜けるよ。誰か来て留めてくれ」
ぼくは人間に聞えない声で、一生けんめいに怒鳴った。
仲間のもくねじたちは、きっとぼくの悲鳴を聞きつけたにちがいない。しかし、彼等の力ではどうすることも出来ないのだ。
ガーン、ガーン、ガーン。
呀っという間に、ぼくは穴からすっぽりと抜けてしまった。そして小さい声をたてて、コンクリートの床に転がった。頭の角をいやというほどぶっつけた。ああ万事休す!
ぼくは、又もや大きな悲しみの淵に沈んだ。床から機械の元の穴まではずいぶんはるかの上だ、翼ない身は、下からとびあがっていくことも出来ない。