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もくねじ

もくねじ

海野 十三

「譚海」1943(昭和18)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,546 字 · 16 页

青空文庫

「まあ……」

ぼくは、ぽいと捨てられてしまった。そこは所内の通路の上で、雨ふりの日のために、舗装道路になっていた。ぼくは赤面した。もう何も考えまい。

ぼくは目をつぶって死んだようになっていた。が、最後にりっぱな人に拾い上げられた。それはこの放送所の所長さんであった。どうしてこの小さいぼくが見付かったんであろうか。所長さんは、日向に立ち留って、ぼくを摘みあげ、つくづくと見ていた。

「やれやれ可哀想に、このもくねじは……。生まれながらの出来損いじゃな。ここへ捨てられるまでは、さぞ悲しい目に会ったことじゃろう。おい、もくねじさん。お前はこのままじゃ、どうにもうだつが上らないよ。だからもう一度生れ変ってくることだね。真鍮の屑金として、もう一度製錬所へ帰って坩堝の中でお仲間と一緒に身体を熔かすのだよ。そしてこの次は、りっぱなもくねじになって生れておいで」

所長さんのやさしい言葉に、ぼくは胸がつまって、泣けて泣けて仕方がなかった。さすがに技術で苦労した所長さんだ。ぼくのような出来損いのもくねじの人生を考えてくださる、この情け深い所長さんの言葉によって、ぼくはこれまでの身を切られるようなつらいことを、一遍に忘れてしまった。