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よものながめ
よもの眺め
宮本 百合子
「近代文学」第一巻第一号、1946(昭和21)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,293 字 · 7 页
一定の段階までは、人間性というものの巨大な発展の目安となって来た過去のインディヴィジュアリズムが第二次大戦の開幕とともに、音を立てて崩壊する姿が、「欧羅巴の七つの謎」のあらゆる頁にうかがわれるのである。
わたし達は、ロマン及びヨーロッパ各国における一団の人々の善意の悲劇を知りたく思う。それにつけても、ロマンの近年における代表作であった「善意の人々」の完全な訳を読みたいと思う。フランスの作家ジュール・ロマンを、海峡の彼方の国々イギリスやアメリカの、平和を愛し、国際正義を希うおとなしく善意ある心情の友としたのは、その「善意ある人々」であった。
第二次大戦の参加とともに、日本では明治以来の社会的後進性がすっかり露わになった。そして悲しがなし近代的個性の自覚の上によろめき立っていた文学は、最近三年間に、殆ど文化として抵抗らしい抵抗さえも示さずに崩れ終った。ここでも、日本なりに、現代文学における過去のインディヴィジュアリズムは崩壊したのであったが、フランスに於けるその現象との間には、根本の相異が見られると思う。フランスの所謂教養の中では、十九世紀以来の個性の開花とその爛熟とが飽和点にまで達していたように見える。