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よものながめ
よもの眺め
宮本 百合子
「近代文学」第一巻第一号、1946(昭和21)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,293 字 · 7 页
その作品の中に生き、泣き、雪の中を這って殺された子供の死骸を我が家に引摺って来る母親の、肉体そのものの温かさ、重量、足音の裡に、彼女たちの心もちそのものとして、彼女らがそうして生きとおした苦難の意義が暗示されているのである。
局面の展開の動的なこと、それを、ゆっくりと大きく移してゆく作者の力量は、近代感覚に満ちていて、「静かなドン」の調子と全く違う。浅く見れば、映画の技法の影響とも云えそうだけれども、もう一歩近づいてみれば、それは都会的なテムポの感覚から来たモンタージュの力量に止る性質のものでないことは明かである。
イリーンが、科学の知識を、ああもわかりやすく、ああもよろこばしく語り得るのは、彼が、専門の知識に通暁しつくしていて、その上に、人類がより明るく智慧の光りに照らされて生きる愉しさを、知りつくしているからではなかろうか。知りつくしたことについて、人はいつも分りやすく、ふっくりと語る。ワンダの作品をよむと、この大戦を経つつ、雪深き一つの国では、人々が社会に生きる感覚において、どんな長足の進歩をとげたかということが窺われる。辛苦と血とが、生きているものの実質として、のこりなく摂取されているらしいことを感じるのである。