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ろまんどうろう
ろまん灯籠
「婦人画報」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,222 字 · 74 页
私の愛着は、その作品に対してよりも、その作中の家族に対してのほうが強いのである。私は、あの家庭全体を好きであった。たしかに、実在の家庭であった。すなわち、故人、入江新之助氏の遺家族のスケッチに違いないのである。もっとも、それは必ずしも事実そのままの叙述ではなかった。大げさな言いかたで、自分でも少からず狼狽しながら申し上げるのであるが、謂わば、詩と真実以外のものは、適度に整理して叙述した、というわけなのである。ところどころに、大嘘をさえ、まぜている。けれども、大体は、あの入江の家庭の姿を、写したものだ。一毛に於いて差異はあっても、九牛に於いては、リアルであるというわけなのだ。もっとも私は、あの短篇小説に於いて、兄妹五人と、それから優しく賢明な御母堂に就いてだけ書いたばかりで、祖父ならびに祖母の事は、作品構成の都合上、無礼千万にも割愛してしまっているのである。これは、たしかに不当なる処置であった。入江の家を語るのに、その祖父、祖母を除外しては、やはり、どうしても不完全のようである。私は、いまはそのお二人に就いても語って置きたいのである。そのまえに一つお断りしなければならない事がある。