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わがしそうのいぶき

わが思想の息吹

坂口 安吾

「文芸時代 第一巻第三号」1948(昭和23)年3月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,454 字 · 5 页

青空文庫

がある、私の思想の地盤がある、そのことを先ず第一に気付き、考えていたゞかねばならぬ。

私の「堕落論」とか、人生肯定の態度の底には、この「いたわり」がひそみ、そして、この「いたわり」が徐々に変貌しつゝある。もっと冷酷に鬼の目をむいてみせることは易しいことだ。鬼になるか、人になるか、そこにも又、問題はあるであろうし、私も人たらず、鬼とならざるを得ぬような生長変貌が行われぬとは云いきれぬ。未来のことは分らない。ともかく私が現在辿り得た思想の地盤というものは、私の自伝的作品に於て、私が選んで語らなかった事実、その選び方の上にあるということを知って欲しい。

そして、その知り方は、読者は事実的にそれを知ることは出来ないのであるから、逆に、書かれていることの事実を、事実としてゞなしに、作者の思想の息吹を通して読みとって欲しい。

丹羽文雄君が「二十七」を不マジメな私小説だと云い、あのように他人のスキャンダルを露出してはいかぬ、と述べていることが、まったく的はずれであること、以上、のべたところで判っていたゞけると思う。

あの作中、たゞ一人、Wという人だけが仮名で出てくる。