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わがあいするしじんのでんき(さん)

わが愛する詩人の伝記(三)

室生 犀星

――萩原朔太郎――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,406 字 · 22 页

青空文庫

北原白秋が或る時私に可笑しそうに言った。「萩原って妙な男だよ、自分の娘の事を話しする時にもきまり悪るげに羞かしそうにするんだよ、自分の娘なんだよ、それが君。」と、萩原朔太郎の心に何時までもあるいじらしさを指摘して言った。だが、この問題は私自身にしても、自分の娘の話をするときには鼻白むを感じるし、少々困るふうもする。だいたい父親という奴はムスメの事になると急にしなくともよい、てれ隠しの低い喉の息払いの一つもして、今まで冗談を言っていたのに、急にマジメくさった顔付になるものである。ムスメというしろものは父親にとって実に厄介千万な物であって、同時にいささか沽券をつけたいしろものでもあるのだ。萩原ははずかしそうに娘のことを話したのは、白秋のとり方は大げさであったろうが、萩原が知らない間にこんな表情をしたことは、やはり萩原という人がどんなに匿していても、かくしきれないいじらしさを持っていたことが判るのである。

萩原は結婚十年くらいで、第一夫人稲子さんと話しずくで別れていた。葉子さんも結婚して四五年で別れていた。葉子さんは萩原の死後その母親の稲子さんが北海道にいられることを知ると、朔太郎全集の印税が沢山はいっていたので、どうにもお母さんに逢いたくなり耐えきれずに、飛行機で北海道に飛んで行き、お母さんを東京につれて来