轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わがまち
わが町
織田 作之助
「文藝 第十巻年十一号」改造社、1942(昭和17)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,869 字 · 52 页
もちろんここは物干し場にもなる。けれど、風が西向けば、もう干せない。日の丸湯の煙突は年中つまっていて、たちまち洗濯物が黒くなってしまうのだ。
羅宇しかえ屋の女房は名古屋生れの大声で、ある時、亭主を叱った声が表通まで聞え、通り掛った巡査があやしんで路地の中まで覗きに来たというくらい故、煙突の苦情は日の丸湯の番台へ筒ぬけだが、しかし、改まって煙突の掃除のことで、日の丸湯へ掛け合った者はひとりもない。日の丸湯の主人というのは、先代より引続いて、河童路地の家主であり、横車も通した。河童路地は只裏ともいい、家賃は只同然にやすかったが、それさえ誰もきちんと払えた例しはなかったのだ。
つまりは、貧乏長屋であった。だから、たとえば蝙蝠傘の修繕屋のひとり息子は、小学校にいる頃から、新聞配達に雇われ、黄昏の町をちょこちょこ走った。
明るいうちに配ってしまわぬと、帰りの寺町がひっそりと暗くて怖い。十歳の足で、高津神社の裏門の石段を、ある日、あわてて降り、黒焼屋の前まで来ると、
「次郎ぼん、次郎ぼん。」
うしろから呼びとめられた。振り向くと、血止めの紙きれをじじむさく鼻の穴に詰め込んだ他吉が、空の俥をひきながらにこにこ笑っていた。