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わがまち
わが町
織田 作之助
「文藝 第十巻年十一号」改造社、1942(昭和17)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,869 字 · 52 页
「ほな、おっさんに夕刊一枚おくれんか。」
「やったかて、読めるのんかいな。」
「殺生な。ほんまはな、夕刊でな、鼻の穴の紙を……。」
詰めかえながら、河童路地へ戻って来ると、めずらしく郵便がはいっていた。
切手を見て、マニラの婿から来た手紙だとはすぐ判ったが、勿論読めなかった。
「〆さん、〆さん。留守か、居るのんか。」
隣の〆団治に声をかけた。すると羅宇しかえ屋の家の中から、声が来て、
「〆さんは寄席だっせ。」
「さよか。――ところで、おばはん、けったいな事訊きまっけど、おまはん字ィはどないだ?」
「良え薬でもくれるのんか。なんし、わての痔ィは物言うても痛む奴ちゃさかい。」
「あれくらい大きな声出したら、なるほど痛みもするわいな。」
と、理髪店朝日軒で客がききつけて、大笑いだった。朝日軒の主人の敬吉は講義録など読み、枢密院の話などを客にして、かねがね学があると煙たがられていた。他吉ははいって行き手紙を見せると、敬吉はちらと眼を通して、
「他あやん、えらい鈍なこっちゃけど、こらわいには読めんわ。」
と、びっくりした顔だった。
「えらいまた敬さんに似合わんこっちゃな。どれ、どれ、わいにかして見イ、読んだる。