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わがまち
わが町
織田 作之助
「文藝 第十巻年十一号」改造社、1942(昭和17)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,869 字 · 52 页
ここで逃げ出してしもてやな、工事が失敗になって見イ、死んだ連中が浮かばれん。わいらは正真正銘の日本人やぜ。」
と、大阪弁で言った。すると、
「そうとものし。俺らはアメリカ人や、ヘリピン人や、ドシャ人の出来なかった工事を、立派にやって見せちゃるんじゃ。俺らがマジダへ着いた時、がやがや排斥さらしよった奴らへ、お主やら、この工事が出来るかといっぺん言わな、日本人であらいでよ。」
と、言う者が出て、そして、あとサノサ節で、
「一つには、光りかがやく日本国、日本の光りを増さんぞと、万里荒浪ね、いといなく、マニラ国へとおもむいた。」
と、うたいだすと、もう誰もベンゲットへ帰ることに反対しなかった。
そうして、元通り工事は続けられたが、斃れた者を犬死にしないために働くという鶴田組の気持はたちまち他の組にも響いて、何か殺気だった空気がしんと張られた。屍を埋めて日が暮れ、とぼとぼ小屋に戻って行く道は暗く、しぜん気持も滅入ったが、まず今日いちにちは命を拾ったという想いに夜が明けると、もう仇討に出る気持めいてつよく黙黙と、鶴嘴を肩にした。鉛のように、誰も笑わず、意地だけで或る者は生き、そして或る者は死んだ。