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わがまち
わが町
織田 作之助
「文藝 第十巻年十一号」改造社、1942(昭和17)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,869 字 · 52 页
」
と、あやしい手つきをしてお化けの恰好をして見せた途端に、いきなり相手の横面を撲り、「文句があるなら、いつでも来い。わいはベンゲットの他あやんや。」
それで、いつか「ベンゲットの他あやん」と綽名がつき、顔は売ったが、そのため敬遠されて商売のモンゴ屋ははやらなかった。国元への送金も思うようにならず、「お前がマニラにいてくれては……」困る旨の話も有力者の口から出たので、内地へ残して来た妻子が気になるとの口実で、足掛け六年ののち、大阪へ帰ると直ぐ俥夫となり、からだ一つを資本に年中白い背広の上着を羽織って俥をひき、「ベンゲットの他あやん」の綽名はここでも似合った。
そうして、十年経ち、大正七年の春、娘の初枝はもう二十一歳、町内のマラソン競争で優勝した桶屋の職人を見込んで婿にしたが、玉造で桶屋を開業させたところ、隣家から火が出て、開業早々丸焼けになった。げっそりして、蒲団をかぶってごろごろしながら、
「冷やし飴でも売りに歩かな仕様ない。えらい騒動や。」
と、心細い声を出しているのを、他吉は叱りつけて、
「お前みたいな気では、飴がくさってしまう。それとも、よっ程冷やし飴が売りたけりゃ、マニラへ行ってモンゴ屋商売をせエ。