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わがせいしんのしゅうい

わが精神の周囲

坂口 安吾

「群像 第四巻第一〇号」1949(昭和24)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,670 字 · 32 页

青空文庫

私たちにとって必要なのは、信頼のできる医者なのである。すくなくとも、私には、もはや食事の如くに必要であった。

しかし、いったい、健康とは、どういうことを云うのだろう。私が東大の神経科で見た分裂病の患者の半数ぐらいは、むしろ筋骨隆々たる人たちであった。私自身も、十八貫の肉体なのである。私はアドルム中毒で入院したが、鬱病という診断でもあった。しかし鬱病であるか、どうか、私は疑問に思っている。

私は二十一の時、神経衰弱になったことがあった。この時は、耳がきこえなくなり、筋肉まで弛緩して、野球のボールが十米と投げられず、一米のドブを飛びこすこともできなかった。

この発病の原因がハッキリ記憶にない。たぶん、睡眠不足であったと思う。私は人間は四時間ねむればタクサンだという流説を信仰して、夜の十時にねむり、朝の二時に起きた。これを一年つづけているうちに、病気になったようである。自動車にはねられて、頭にヒヾができたような出来事もあったが、さのみ神経にも病まなかった。また、恋愛めいたものもあったが、全然幻想的なセンチメンタルなもので、この発病に関係があろうとは思われない。