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アンゴウ
アンゴウ
「サロン別冊 特選小説集・第二輯」1948(昭和23)年5月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,249 字 · 23 页
365 11 4
365 10 9
368 6 2
370 10 7
367 6 1
370 4 1
心覚えに頁を控えたものかと思ったが、同じ数字がそろっているから、そうでもないらしい。まさか暗号ではあるまいが、ヒマな時だから、ふとためす気持になって、三十四頁十四行十四宇目、四字まですゝむと、彼はにわかに緊張した。語をなしているからだ。
「いつもの処にいます七月五日午後三時」
全部でこういう文句になる。あきらかに暗号だ。
神尾は達筆な男であったが、この数字はあまり見事な手蹟じゃなく、どうやら女手らしい様子である。然し、この本が疎開に当って他に売られたにしても、魚紋書館の用箋だから、この暗号が神尾に関係していることは先ず疑いがないようだ。
用箋は四つに折られている。すると彼の恋人からの手紙らしい。
矢島は神尾と最も親しい友達だった。それというのも二人の趣味が同じで、歴史、特に神代の民族学的研究に興味をそゝいでいた。文献を貸し合ったり、研究を報告し合ったり、お揃いで研究旅行にでかけることも屡々だった。それはどの親しさだから、お互に生活の内幕も知りあい、友人もほゞ共通していたが、さて、ふりかえると、趣味上の友人は二人だけで、魚紋書館の社員の中に同好の士は見当らない。