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イグアノドンのうた

イグアノドンの唄

中谷 宇吉郎

――大人のための童話――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,469 字 · 21 页

青空文庫

その時足跡が残されたのであるが、それは長さ二十二吋、幅十一吋もある巨大なもので、人間の足跡に似た形であったという。

ヒマラヤの山中に巨人かゴリラか分らない怪物が棲んでいるという伝説は、土地の人たちばかりでなく、印度人の中でも信じている人がかなりある。昨年のエヴェレスト登山隊長シプトン氏の手記によると、ヒマラヤの住人たちは、この怪人をヤティ(縁起の悪い雪男)と呼んでいるそうである。シプトン氏の案内人の一人は、二年前にこのヤティに遭ったといっているが、それは半人半獣の怪物で、背丈は五呎六吋くらい、全身赤味がかった栗色の毛で蔽われていたが、顔だけは毛がなかったという話である。

シプトン氏が写真に撮った奇怪な足跡を、動物学者たちは、ラングール猿だと鑑定したが、シプトン氏は大分不服のようである。『朝日新聞』に連載された氏の手記の中から、これに関係した部分を抜萃してみるのも、興味あることであろう。この足跡を発見したのは、昨年の十一月八日のことで、エヴェレストに近いメンルンツェの氷河の上である。「われわれは午後三時半、峠の向う側の氷河に達し、南西の方向に下って行った。