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イタリーげいじゅつにあるひとつのもんだい
イタリー芸術に在る一つの問題
宮本 百合子
所謂「脱出」への疑問
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,375 字 · 7 页
この映画の語る範囲では現在ファシストの国で云われている「脱出」が本質に於ては新しいものではなく、旧い植民地政策のより一般化されたアジテーションであるとしか見えない。世界の文化の問題から見れば、イタリーの一般知識人の中にあるハケ口のない脱出の欲求が、外から却って彼等を脱出せしめざる方向へ振り替えられていることが、関心事であろうと思う。
「リビヤ白騎隊」が芸術的に弱いロマンティシズムに捕われながら、手法の上で一種独特の単調な反復を敢てしている点が、私に数ヵ月以前観たドイツのヒマラヤ登攀実写映画を思い出させた。その映画でもやはり人間の努力の姿を語ろうとして同じような山道を攀じ登る姿を繰り返し繰り返し見せた。山の岩石の構造の相違やそこを登攀する技術の相違や雪の質、氷河の性質等に就いてカメラがもっと科学的に活用されていたらばあれだけの長さの内容をもっと豊富にし得たであろう。
ソヴェト同盟のシュミット博士一行の極地探険の記録映画は誠に感銘深いものであったが、そこには歪められたロマンティシズムは少しもなかったのである。
沙漠という自然の事情と、それを生産的に開発しようとする人間の意志、土地の相貌が新しくなるにつれその労作の過程を通って人間が生活感情、世界観を新にして行く現実の例はソヴェト映画の「トルキシブ」