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エマヌエル・カント『しぜんてつがくげんり』かいせつ

エマヌエル・カント『自然哲学原理』解説

戸坂 潤

「カント著作集 第一一巻」岩波書店、1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,570 字 · 72 页

青空文庫

運動学の課題はかくして――相対空間の導入によって――解かれる。そしてこの解決を可能ならしめた根本的根拠は、この相対空間の導入によって云い表わされた運動並びに静止の相対性に外ならない。運動(静止)の相対性は本文を一貫して徹底した思想であり、すでに『運動と静止との新説』に於て主張されていることは述べた。素よりカントは之に対して積極的な証明を与えてはいない、カントによれば之は一つの「公理」である。蓋しそれは証明を要求するには余りに明白、当然であることを人々は認めるであろう。この明白さ当然さに如何なる認識論上の理由があるかは問わないとして、少くとも之を否定する根拠は先験的には何処にも発見出来ないと共に、経験的にもこの立場が積極的に主張され得るということ、即ちこの先験的予想を実験的な検証によって正当として解釈出来るということ、之は最近の物理学の基礎的研究が得た事実上の結果である。

運動学に於ては物質は数学的点と考えられることが出来た。というのは物質をば一応は運動の主体とは考えたにしても、まだその運動を所有するもの或いはそれを惹き起こすものとは考えていなかったからである。