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エマヌエル・カント『しぜんてつがくげんり』かいせつ

エマヌエル・カント『自然哲学原理』解説

戸坂 潤

「カント著作集 第一一巻」岩波書店、1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,570 字 · 72 页

青空文庫

後者は創見ある有名な仮説(カント・ラプラスの星雲説)に立脚して自然の終局の根柢を説明しようと企てた点に於て、一面純粋に自然科学的であると共に、他面之を哲学上の労作と見做すならば、それは批判期前の特色を有つと考えられなければならない(初版は一七五五年に出ている、そしてカント学者は一七七〇年を以て前批判期と後批判期とを分つのが常である)。之に反してわが著作は年代から云っても全く批判を通過した思想の成熟を示すものである。一七八一年の『純粋理性批判』の新しき哲学法は一切の文化領域に対して基礎を与えることを以てその任務とする、そしてかかる任務は『プロレゴーメナ』によって見誤る余地もなく繰り返えして主張された(一七八三年)。それ故自然乃至自然科学も亦そのような批判的基礎をカントから受けとらねばならぬ。『実践理性批判』に先立つこと二年、『判断力批判』に先立つこと四年、即ちカントの著作期の絶頂に算入すべき一七八六年にこの約束が果された。それがこの著作の初版である。晩年の未完成品『自然科学の形而上学的原理から物理学への推移』を除くならば、之はカントの自然哲学上の注目すべき作品の殆んど最後に位いするものである。