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エマヌエル・カント『しぜんてつがくげんり』かいせつ

エマヌエル・カント『自然哲学原理』解説

戸坂 潤

「カント著作集 第一一巻」岩波書店、1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,570 字 · 72 页

青空文庫

何となれば一般形而上学の原則――「経験の比論」はそれに属する――を物体的自然に応用することに於て、経験的ではないが併し経験的概念がその根柢に横たわっていなければならぬ筈の、純粋の物体的自然論が成り立つ筈であったからである。

物体的自然の変化、それが運動である。この変化の主体、その実体が物質である。そこで一切の物体的自然の変化に於て物質量は全体として増減することなく不変でなければならない。何となれば、一般に形而上学に於ける実体の特徴はその恒存性の外にはないが、恒存が事実上認識されうるのは又、ただ空間に於てのみである。空間に於けるこの恒存者こそ物質である。処が一般に恒存者はその性質そのものからして生起消滅が不可能な筈である。それ故物質の生起消滅は不可能でなければならない。尤も物質には無限の部分があり、各部分は運動力を以て運動し得る筈であったからして、物質部分の分離は常に起こり得ることである、けれども之は決して消滅ではない。即ち物質量は全体として増減することなくして不変でなければならない。之が力学の第一法則である(恒存者が認識され得るのはただ空間に於てのみであった。