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エマヌエル・カント『しぜんてつがくげんり』かいせつ

エマヌエル・カント『自然哲学原理』解説

戸坂 潤

「カント著作集 第一一巻」岩波書店、1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,570 字 · 72 页

青空文庫

又もしその何れでもなくして、AB共に運動していると考えねばならぬとすれば、この場合の判断は分配判断である。従って運動関係には択一的、選言的、分配的の三つの場合があるのである。第一の場合は、AB何れを運動していると考えるのも自由であるから、AもBも同様に運動していると見られることが可能である、併しそれはただ可能であるに過ぎない。第二の場合にはABの一方が現実に運動しており之に反して他方は運動していない、たとい他方が運動しているように見えたにしてもそれは仮象に過ぎないのである。第三の場合には、運動はAB両物体に必然的に存しなければならぬ。運動の可能性、現実性、必然性の区別はかくの如くにして先ず与えられる。

第一に運動は一定の方向と一定の速度を以て行なわれる。もし他より加えられる運動変化の原因がなければ、運動は直線運動でしかあり得ない。直線運動にあっては已に述べて来たように、Aが運動しBが相対空間に於て静止していると表象するのも、之とは反対にAが絶対空間に於て静止しBが相対空間と一緒に前と反対の方向に運動すると表象するのも、全く同一の運動現象を云い表わす筈であったから、Aに相対空間に於ける運動を与えるも、又は絶対空間に於ける静止を与えるも、吾々にとっては自由でなければならない。