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エマヌエル・カント『しぜんてつがくげんり』かいせつ

エマヌエル・カント『自然哲学原理』解説

戸坂 潤

「カント著作集 第一一巻」岩波書店、1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,570 字 · 72 页

青空文庫

であるから世界の外に考えられた虚は元来不当な考え方に由来するに外ならない。又たとい論理的に之が可能であるにしても、物理的理由からして之は却けられるであろう。何となれば天体を包んでいるエーテルは天体を遠ざかるに従ってその密度を無限に小にするにしても決して空間を虚とはしないであろうからである。世界内に考えられたる虚は天体間の虚空間か物質内の空孔であるが、それは成程論理上は不可能ではないにしても、之亦物理的な理由から云って不必要であるであろう。元来物質内の空孔はそれによって物質の密度の差を説明しようためであるが、已に運動力の内包量とその種々なる度によってそれを説明することが出来た以上、之は必要がない。のみならずエーテルが万有引力によって一切の物質に圧縮力を加えているとすれば、物質内の空孔はこの力に抵抗することは出来ないから、それ自身エーテルを以て充実されなければならぬであろう。そうすればかかる虚は不可能でもある。又天体間に虚空間を考えるのはそれによって天体の自由なる運動を説明しようためであるが、それも亦不必要である。何となれば空間の充実はどれだけでも少く考えることが出来た筈であったからして、それは天体の自由なる運動を妨げることになるとは限らないから。