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エマヌエル・カント『しぜんてつがくげんり』かいせつ

エマヌエル・カント『自然哲学原理』解説

戸坂 潤

「カント著作集 第一一巻」岩波書店、1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,570 字 · 72 页

青空文庫

併し兎に角この書物の注釈書が現われることは読書界にとって好ましいことではないであろうか。私はこの書物を読むのに貴下の他の著述に増して最大の困難を覚えた。そして私が之を充分に理解し得たのは全く貴下から直接に口授を受けた賜であるのを忘れることは出来ない」、と。イェニッシュも亦カントに書いている。貴下の不朽の著述の重大にしてこの上なく有効なる観念の多くが注意されずにいる原因はどこにあるのであるか。例えば自然科学の形而上学的原理の如き最も重大なものが貴下の信奉者によってあまり注目されずにいるという原因は何であろうか、と。ベンダヴィトのこの著作に対する講義、及びグレッフェの注釈書が世に出されたのは、本文初版の出版以後十三年目の一七九八年である。

この著作の重大さは当時かくの如くにして容易には一般の承認する処とはならなかった。のみならずカントの正統的継承者として自らも許し他も許したフィヒテは、実践理性の優位にその元来の重心を据えていた観念論に於て、この優れて意味深い自然概念から特別の影響を蒙ったようには見えない。併しながら蔽われていた一面はそれが蔽われていただけにそれだけ他日に持つべき影響は有力でなければならぬであろう。