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エマヌエル・カント『しぜんてつがくげんり』かいせつ

エマヌエル・カント『自然哲学原理』解説

戸坂 潤

「カント著作集 第一一巻」岩波書店、1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,570 字 · 72 页

青空文庫

得ない。処が吾々は一般に哲学の問題の中枢に於て――カントに従って――批判的と形而上学的とを区別する。而も恰もこの区別が批判的自然哲学と浪漫的自然哲学との相違でなければならない。両者の区別は根本的である。故に後者は前者の正当な発展ではない。けれどもかく云えば人々は問うに違いない、それでは形而上学から区別されたるカントの批判的自然哲学が、何故カントによって又自然の形而上学と呼ばれるのであるか、この命名がすでに吾々の今与えた区別と直接に矛盾しているのではないか、と。併しこれは第一に言葉の問題である。カントの茲に形而上学と呼ぶのは決して批判に対立し之を否定する意味を持つのではない、単に哲学的という程の用語なのである。尤も第二に形而上学は批判に対立されて用いられている場合もある(けれども批判の否定とはならない)。併しこの場合であるならば吾々はカント以前の形而上学と、カント以後の即ち批判を含んでいなければならない処の「将来の形而上学」とを区別しよう(歴史的にカント以後に現われた形而上学が直ちにカントの「将来の形而上学」であるのではない)。自然の形而上学は無論後者の意味に於ての形而上学である、それは批判を否定するのではなくして却って批判を序説(プロレゴーメナ)とする処の哲学の本論に外ならない。