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オフェリヤごろし

オフェリヤ殺し

小栗 虫太郎

「改造」改造社、1935(昭和10)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,366 字 · 58 页

青空文庫

父――私は、ただそうとのみ感じただけで、その瞬間、神経が寸断寸断にされたような、痳痺を覚えました。けれども、一方にはまた、妙に強い力が高まって来て、いっそ父と話してみたい欲求に駆られて来たのです。それで、眼を開いてみますと、亡霊の後姿はもうそこにはないので、私は思い切って、舞台裏の方へ駈けて行きました。すると、道具裏の垂幕の蔭には――そこには、淡路さんが居りましたのですけど」

「ああ、それが淡路君なんでしたか。それなら、何もそう、奇異がる理由はない訳じゃありませんか。きっと、あの男ですよ――貴女にそう云う悪戯をしたのが――。で、その時は、まだ亡霊の扮装で居りましたか?」

そうしてはじめて法水は、気抜けしたように莨を取り出した。しかし、遂にその一人二役は、幡江の心中に描かれていた、幻とだけでは収まらなくなってしまった。

「いいえ、もうすっかりポローニアスになっていて、亡霊の衣裳を側に置いたまま、寝そべっていたのです。けれどもあの方は、一向何気なさそうな顔付で、舞踊練習室は通らなかった――と云うのでした。そう云えば、あの室の前には、横へそれる廊下が御座いますわね。