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オフェリヤごろし
オフェリヤ殺し
小栗 虫太郎
「改造」改造社、1935(昭和10)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,366 字 · 58 页
「なに、告白悲劇……とにかく、冗談は止めにして貰おう」
と棘々しい語気で、熊城が遮った。
「どうして冗談なもんか。現に前の幕で、オフェリヤは一々花を取り違えたじゃないか。然し、決してそれは、幡江の錯乱が生んだ産物ではないのだよ。あの女の皮質たるや、実に整然無比、さながら将棋盤の如しさ。ねえ熊城君、僕はエイメ・マルタン(花言葉の創始者)じゃないがね。人は自分の情操を書き送るのに、強がちインキで指を汚すばかりじゃない。それを花に托けて、送る事も出来るだろうと思うのだよ」
そう云って法水は、机の蔭から取り出した花束を、卓上に置いた。二人はその色や香りよりかも、法水が繰り拡げて行く、美しい霧に酔わされてしまった。
「君達にも、記憶が新しいだろうとは思うが、幡江は幕切れの際に、父の最期と云い、これだけの花を舞台に撒き散らしたのだ。最初は花葛――夜も昼も我が心は汝が側にあり――さ。次は木犀草、これは、吾が悩みを柔げんは、御身の出現以外にはなし。それから、尋麻草――貴方は余りに怨深くいらっしゃる。そして、幡江は最後に、この翁草と紅鳳仙花とで、結び付けたのだよ。あの女は、許して下さい、私にだけ触れないで――と叫んだのだ」