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オペラのきと
オペラの帰途
岡本 かの子
「令女界」1932(昭和7)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,541 字 · 3 页
青年「パリの男はいたずら者だな、外国のおんなを自動車に乗せて走ろうなんて」
紳士「まだ攻撃かい――そりゃいたずら者の時もあるさ、だけど今夜の場合なんかまったく物好きの深切ですよ。だって僕は歌劇の舞台以外おしろいをべったり塗って西洋人のなかをしゃなしゃな歩く沢山のマダム・バッタフライの複製には飽き飽きしているんだ。このお嬢さんは……いや、ママさんはあっさりしている。ボックスでも眼鏡を抱えこんで真面目に観ている……好意が持てたね。タキシーなんか探させたくなくなったね、僕の車に乗せて上げたかった。君がついてるのを知らなかった、好息がいたらなお好都合じゃないか。」
青年「ああそうか――だけどお嬢さんなんて――まったく西洋人には東洋人の年頃が分らないのがおかしいね、殊に女は子供に見られやすいね」
紳士「そうだ、東洋の大がいの婦人はお嬢さんに見えるね」
青年「お嬢さんを深切にするなんてやっぱりいたずらがかってますね」
紳士「違うよ君。パリの男のいたずらの相手はマダムや、それ者の社交婦人だよ。君、大がいな場合、お嬢さんには深切ぐらいしか起らないよ」
自宅の少し手前で青年は婦人の手を曳いて自動車から降りた。