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カール・マルクスとそのふじん

カール・マルクスとその夫人

宮本 百合子

「紺青」1947(昭和22)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,263 字 · 25 页

青空文庫

はマルクス家専売の大人と子供の遊びであった。娘たちが大きくなってからは、彼女たちのシェークスピアの詩の暗誦仲間であり、バーンズの共同の愛好者であった。初孫のジャンがいたずら盛りとなってからは、このジャンがマルクスの最も愛すべき支配者となった。エンゲルスとリープクネヒトが馬になり、カールが馭者台になった。小さなジャンはこの三人の偉大な社会主義者の上に跨って彼の可笑しい国際語で叫んだ。「ゴー・オン! プリュ・ヴィット! ハラ!」(進め! もっと早く! ハラ!)。額から汗を流して遊び戯むれる「大きな子供」のカールをイエニーはわれを忘れて見とれた。直情径行で妥協ぎらいで廉潔なカールは、イエニーから見れば本当に巨人的な子供であった。その鼻の形が示しているように気短かなところがあるカールは、何かにつけてイエニーの驚くべき公平な判断と聰明を必要とした。

イエニーはカールの読みにくい原稿の清書もよくした。けれども、決してトルストイ夫人の「有名な清書」のようにではなく。

一八六七年、遂に世界的な名著『資本論』第一巻が出版された。カールは四十九歳、イエニーは五十三の時であった。