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カール・マルクスとそのふじん

カール・マルクスとその夫人

宮本 百合子

「紺青」1947(昭和22)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,263 字 · 25 页

青空文庫

苦痛の多い経過の長い癌と闘わなければならなかった。六十六歳のイエニーは、もう稀にしか起きられなくなった。いとしい「モール」がこの年は肋膜炎で絶望となった。「それは恐ろしい時でした。」「あんなに合体していたこの二人は、もう同じ部屋に一緒に居ることは出来なかったのです。」末娘エレナーは書いている。彼女と年取ったレンシェンとがカールの命を救った。二人は昼夜ぶっ通しの看病をした。不思議に命をとりとめた「モール」が、病むイエニーの部屋へ初めて行った朝の美しい光景を、エレナーは感動をもって記録している。

「二人は一緒に若返りました――彼女は恋する乙女に、彼は恋する若者に、一緒に人生に歩み入るところの――そして互いに生涯の別れを告げているところの――病みほつれた老人と死につつある老婦ではありませんでした。」

カールはもう一度丈夫になれそうに見えた。その時――一八八一年十二月二日――イエニーが死んだ。「親愛なる、忘れがたき生涯の伴侶」は失われた。最後までよいユーモアを失わず、みなの気を引立てるために冗談をいって笑いまでしたイエニーは、最後の意識が失われようとする時カールに向って云った。