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ガルスワーシーのいえ

ガルスワーシーの家

岡本 かの子

「行動」1934(昭和9)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,123 字 · 18 页

青空文庫

此の五人の印度女の内で一段際立って見えるカシミヤ代表の秘書の夫人は細くすんなりとした体に桃色絹のインド服を頭や腕や腰にはめた黄金造りのバンドで締めつけ、同じ色絹のべールを頭から背へかけて居た。足には流石に英国風の飾り靴をはいて居たが足頸にも金環をはめて居た。彼女は腰掛けて居ながら亢奮したように絶えず身を動かして体中の金飾りを鳴らした。彼女は身をくねらせて魅惑的なしなをしながら大理石の彫刻のような顔の鼻柱に迫る両眼の生々しい輝きに時折り想い詰めた情慾のようなひらめきを見せてべールの間からガルスワーシー夫妻や二人の日本人達を交互に見て癇高い声で言った。

――私は詩人です。私は三代続いた詩人の家の娘です。私は詩が好きですよ。英国ではイエーツが一番好きで、其の次ぎにはシェリー、キーツが好きです」

カシミヤ夫人は景子が期待して居たように同じ東洋人を懐かしいとも言わない。そればかりか其の度合いの取れない飛び上った話の調子に景子達の方が思わず恥かしい気持ちにさせられて黙って居るより外仕方がなかった。

宮坂は始め客達に目を瞠らせられた物珍らしさが過ぎると、此の不意に現われて際限もなく自分の会談を奪って居る女性達にいらいらした不満を抱き始めたらしかった。