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ケーテ・コルヴィッツのがぎょう
ケーテ・コルヴィッツの画業
宮本 百合子
「アトリエ」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,607 字 · 22 页
ナチスの迫害のうちにすごした晩年の十年間が、ケーテにとってどのような時々刻々であったかということは、およそ想像される。それでも彼女はくずおれず、しっかりと目をあいて恐ろしい老齢の期節をほこりたかく生きとおした。ナチスの降服した年の五月、ケーテは、どんな思いにもえて、ドレスデンの新緑を眺めただろう。
ケーテ・コルヴィッツの死がつたえられるとニューヨークのセント・エチェンヌ画廊で、ケーテの追悼展覧会が開かれた。そこでケーテの未発表の木版画(一九三四―三五年のもの)や「五十七歳の自画像」(一九三四年作)旧作「机の上にねむる」などが陳列された。ケーテ・コルヴィッツの画業が、ナチスのものでありえなかったということは、とりもなおさず、彼女の生涯と芸術が戦争に反対し、人民の窮乏に反対する世界のすべての人々の宝であることを証明したのであった。
新海氏の伝記の冒頭に晩年のケーテ・コルヴィッツの写真がのせられている。レムブラントの晩年の自画像や老年のゴヤの自画像などは、それぞれの人間像としてわたしたちにつよい感銘を与えるものである。しかし、ケーテのこの写真は、前の二つのどの自画像ともちがっている。