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ケーテ・コルヴィッツのがぎょう
ケーテ・コルヴィッツの画業
宮本 百合子
「アトリエ」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,607 字 · 22 页
ケーテの幼い心に印象づけられた最初のリズミカルな生活の姿はその船の情景であった。屋敷のなかの二つの空地の間に建物があって、そこが石膏の型をこしらえる仕事場になっていた。型からぬきとられてその中に置かれているさまざまの石膏の像は、いつもシュミットの小さな兄妹の好奇心と空想とを刺戟した。
お母さんのケーテがまた絵心をもっていた。子供たちによく古今の大家の絵を模写してやった。そのような環境の間で十四歳になったとき、ケーテに、初めて石膏について素描することを教えたのが、ほかならぬシュミットの仕事場に働いていた一人の物わかりのいい銅版職人であったという事実は、私たちに深い感興を与える。ちょっとみれば何でもないようなこの一つの事実がもっている意味は豊富であると思う。その銅版職人の聰明さや、少女の才能を発見した洞察の正しさが、そこに語られているばかりでない。親方シュミットの家庭の日常の空気が、職人たちをもちゃんとした独立市民として、礼儀と尊敬とをもって待遇する習慣であったことを物語っている。親方とその子供らと、働いている人々の間に間違った身分の差別が存在しなかった。