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ゴールデン・バットじけん

ゴールデン・バット事件

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页

青空文庫

空箱の数はみんなで四個あったがネ」

「ほほう」

「それからもっと面白いことがある。あの部屋には灰皿が三つもあるんだが、さて其の灰皿の中に大変な特徴がある」

「というと……」

「灰皿の中に、燐寸の軸と煙草の灰が入っているのに不思議はないが、もう一つ必ず有りそうでいてあの灰皿には見当らないものがあるのだ」と帆村は云ってちょっと口を噤んだ。

「それは何かというと吸殻が一つも転っていないのだ。灰の分量から考えると、すくなくとも十五六個の吸殻がある筈と思うのだが、一個も見当らないのだ。これは大変面白いことだ」

私には何のことだか見当がつかなかった。

「煙草について、まだ発見したことがある。それは床の上に転がっている三十二本のうち、汚れないのが二十五本で、残りの七本は踏みつけられたものと見え、ペチャンコになっていた。それを調べてみると、ハッキリ靴の裏型がついているから、これは靴で踏みつけられたものと見てよい。しかし靴は、普通ならばあの部屋の入口で脱いで上るようになっている。しかるにこの踏みつけられた七本のバットから考えると、誰か靴を入口で脱がないで、その儘、上へ上った者がいたという説明になるわけだ」