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ゴールデン・バットじけん

ゴールデン・バット事件

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页

青空文庫

「しかしそれは、あの短刀の男が、箱から出したとしても理屈がつくじゃないか」

「それは別に構わない。あの男は元々怪しい節があるのだから、煙草の上の嫌疑が加わっても捜索には大して困らないのだ。なぜかといえば、あの砲丸を金の肩に投げつけるだけの力は、あの男には十分にあると認められるし、それからまた現にあの部屋から出てきたのを見られている。しかし犯人が若い女の方だとすると、煙草は可也重要な証拠になると思う。金が目醒めている間には、あんなに煙草を撒き散すことは出来ない。男は相当抵抗の末重傷を加えられたと認められるから、そうなるとバットが踏みつけられることなしに満足に転がっている筈がない。そうかと云って男がベッドに睡っている間にあの煙草を撒いたのでもない。其は男がベッドから遠く離れたところで重傷しているので解る。ベッド以外に男が睡っていられるところなんてあるものじゃない。どうしてもあの煙草は、男に兇行を加えた上で撒いたものに違いないとなるじゃないか。もう一つ砲丸を擲げることは、どの若い女にも出来るという絶対の芸当ではないのだ。それとも君は、脆弱い女性にあの砲丸を相手の肩へ投げつけることが出来る場合を想像できるかネ」