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ジャーナリズムざっかん
ジャーナリズム雑感
寺田 寅彦
「中央公論」1934(昭和9)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,682 字 · 21 页
三原山投身者が大都市の新聞で奨励されると諸国の投身志望者が三原山に雲集するようなものである。ゆっくりオリジナルな投身地を考えているような余裕はないのみならず、三原山時代に浅間へ行ったのでは「新聞に出ない」のである。
このように、新聞はその記事の威力によって世界の現象自身を類型化すると同時に、その類型の幻像を天下に撤き広げ、あたかも世界じゅうがその類型で満ち満ちているかのごとき錯覚を起こさせ、そうすることによって、さらにその類型の伝播をますます助長するのである。ジャーナリズムが恐るべき性能を充分に発揮するのはこの点であろうと思われる。たとえば大新聞がいっせいにある涜職事件を書き立てると全国の新聞がこれに呼応してたちまちにして日本全国がその涜職事件でいっぱいになったような感じをいだかせる。冷静なる司直の手もまたいくぶんこれに刺激されてその活動を促進されることがないとも限らない。またたとえば忠犬美談で甲新聞が人気を呼ぶと、あとからあとからいろいろな忠犬物語がほうぼうから出て来て、日本じゅうが犬だらけになり昭和八犬伝ぐらいはまたたくひまに完成するのである。