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ジャーナリズムざっかん
ジャーナリズム雑感
寺田 寅彦
「中央公論」1934(昭和9)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,682 字 · 21 页
この事実もまたジャーナリズムのその日その日主義を証拠立てる資料となるであろう。学者の仕事は決して一日に成るものでなく、それを発表した日で消失するものでもないのであるが、新聞ニュースとしては一日過ぎれば価値はなくなる。しかも記者が始めて聞き込んだその日を一日過ぎるとニュースでなくなるのである。それで、誤ってジャーナリストの擒となった学者はそのつかまった日一日だけどうにかしてのがれさえすればそれでもう永久に逃げおおせることができるのは周知の事実である。
こういう実に不思議な現象の原因の一つは新聞社間の種取り競争に関連して発生するものらしく思われる。その日に種にしなければどこか他の新聞に出し抜かれているという心配がある。しかし翌日の新聞をことごとく点検する暇などはない。そうして翌日は翌日の仕事が山積しているのである。
このようなただ一日を争う競争はまたジャーナリズムの不正確不真実を助長させるに有効であることもよく知られた事実である。他社を出し抜くためにあらゆる犠牲が払われ、結局は肝心の真実そのものまでが犠牲にされて惜しいとも思われないようである。事実の競争から出発して結果がうそ比べになるのは実に興味ある現象と言わなければならない。