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ジャーナリズムざっかん
ジャーナリズム雑感
寺田 寅彦
「中央公論」1934(昭和9)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,682 字 · 21 页
この狂風が自分で自分の勢力を消し尽くした後に自然になぎ和らいで、人世を住みよくする駘蕩の春風に変わる日の来るのを待つよりほかはないであろう。
それにしても毎日毎夕類型的な新聞記事ばかりを読み、不正確な報道ばかりに眼をさらしていたら、人間の頭脳は次第に変質退化して行くのではないかと気づかわれる。昔のギリシア人やローマ人はしあわせなことに新聞というものをもたなくて、そのかわりにプラトーンやキケロのようなものだけをもっていた。そのおかげであんなに利口であったのではないかという気がしてくるのである。
ひと月に何度かは今でも三原山投身者の記事が出る。いったいいつまでこのおさだまりの記事をつづけるつもりであるのかその根気のよさにはだれも感心するばかりであろう。こんな事件よりも毎朝太陽が東天に現われることがはるかに重大なようにも思われる。もう大概で打ち切りにしてもよさそうに思われるのに、そうしないのは、やはりジグスとマギーのような「定型」の永久性を要求する大衆の嘱望によるものであろう。しかし、たまには三原山記事を割愛したそのかわりに思い切って古事記か源氏物語か西鶴の一節でも掲載したほうがかえって清新の趣を添えることになるかもしれない。