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ジャーナリズムざっかん

ジャーナリズム雑感

寺田 寅彦

「中央公論」1934(昭和9)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,682 字 · 21 页

青空文庫

昔の新聞にはずいぶんおもしろい例が多かった。心中者の二人が死ぬ前に話し合った言葉などがさもそばで速記者が立ち聞きでもしていたかのように記録されていたりしたものである。それが近松や黙阿弥張りにおもしろくつづられていたものである。これは実に愉快な読み物であったが、さすがにこのごろはそういうのは、少なくも都下の新聞にはまれなようである。しかし、本質的にはこれと同様な記事は今でも日々の新聞に捜せばいくらでも発見されるのである。

ある役所で地方技術官の集合があって、その第何日目かに大臣が出席して演説する予定になっていたところ、当日さしつかえができて大臣は欠席した。しかしその日の夕刊を見ると大臣がちゃんと出席して滔々と演説をしたことになっていた。

ある若い学者がある日ある学会である論文を発表したその晩に私の宅へ遊びに来てトリオの合奏をやっていたら、突然某新聞記者が写真班を引率して拙宅へ来訪しそうして玄関へその若い学者T君を呼び出し、その日発表した研究の要旨を聞き取り、そうしてマグネシウムの閃光をひらめかし酸化マグネシウムを含んだ煙を玄関の土間に残して引き上げて行った。