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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页

青空文庫

だから、私が口説いてモノになったという女は、もっとベタ/\とセンチな純情派や肉感的な荒々しい男性型、平凡な良妻型などいう月並なところで、知的な自信や骨っぽさのある女は例のジロリで、私と交る線がない。ところが、ジロリ型の婦人に限って、美人が多い。

然し、交る線がないということは、おのずから恋愛感情に自制や限定をつくるものか、コイツ美人だな、と思っても、夢中になるような心にならない。つまり恋愛というものは、そして恋愛感情というものは、無軌道に自然奔放なものではなしに、おのずから制限のあるもので、たとえば異国の映画女優に、どんなに夢中になったところで、悶々の情、夜もねむれずというような恋愛感情は起る筈のないものなのである。

だから私は若いときから、しばしば女にベタ惚れという惚れ方をして、だらしなく悶々と思いつめたり、夢心持によろこび、よろこびのあまりに苦悶、苦痛、ねむれず、まことにとり乱してあられもない有様であったが、それはみんな手ぢかな女、中には万人の認める美人もいたが、気質的に近い人、成功率の高いある型に限られていた。ジロリ型の女は、始めから他人のつもりにしている自然の構えができていたのである。