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ジロリのおんな
ジロリの女
前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页
編輯などのことでも、啓蒙とか主義主張も、先ず第一に面白く読ませること、それに気がつく女であり、美名とか、たゞ破綻がないという文章などにはだまされない着実なところがある。
誘えば一しょに酒席にもつらなり、ダンスホールにもつきあってくれる。けれども、私をジロリと見る。それは警戒の意味ではなしに、性格的な対立からくるものであった。そこで私は、この夏川ヤス子も、必ずやモノにしなければならぬと天地神明に誓いをたてた。
ある日のこと、私がおくれて出社すると、意外にも、衣子の長女美代子が夏川ヤス子と話をしているではないか。
これが又、小娘ながら、やっぱりジロリの小娘で、何がさてジロリの母からジロリ的観察によって私の内幕を意地悪く吹きこまれているに相違ないから、一人前でもないくせに、てんから私を見くびっている。こういう未成品のジロリは小憎らしいもので、衣子家飼いならしのよく吠えるフォックステリヤ、その程度のチンピラ小動物に心得て、かねて私の敬遠していた存在であった。
「これは、これは、姫君、よくこそ、いらせられた。意外な光臨じゃないか」
自宅にいると、こんな時には即座にジロリ、つゞいてプイと座を立つところだが、さすがに小娘のことで、やゝ俯向いて、クスリと笑っている。