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ジロリのおんな
ジロリの女
前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页
然し私の見るところでは、種則が嫌いではなく、嫌いになろうとしているだけだ。彼女が嫌っているのは、この縁談のフンイキなのである。
少女のカンはたしかであるから、この縁談にからまるお家騒動的フンイキをかぎだして胸をいためているのである。
「実は私も、その話では、かねて大浦先生の依頼をうけて、美代子さんの御心労とはアベコベに、なんとかマトメてくれというお話があったんだよ。美代子さんのような可憐な小鳩を敵に廻しちゃ、私も地獄へ落ちなきゃならない。私も心を入れかえて、美代子さんの気持を第一番に尊重して、犬馬の労をつくしましょう」
こうマゴコロをヒレキする。するとチンピラ動物はとたんに喜んで、実は私は、別に好きな人があるのだなどゝ言いだした。こんな文句をまともにきくと、とんでもないことになる。
この病院に岩本という婦人科の医者がいた。まだ三十だが、手術は名手で、患者の評判が甚だよろしい。大酒飲みで、生一本の男であるが、それだけに、粗野で、私同様、ジロリの女に軽蔑毛ぎらいされる男であった。
この岩本が美代子を自分の女房にと衣子にそれとなく申入れていたのだが、商売柄、女のことでは浅からぬ経験があるくせに、持って生れた性格は仕方のないもので、性格だけの手法でしか女の観察ができないためか、衣子に内々嫌われていることに気がつか