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ジロリのおんな
ジロリの女
前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页
博士の念頭にあることは、衣子や美代子ではなく、もっぱら夏川ヤス子であった。博士の親戚の娘にヤス子の同級生がいるとか、然しそのうえに、博士はヤス子の盲腸を手術しているのであった。
「すると夏川ヤス子夫人は三船君の特別秘書というわけだね」
「御冗談仰言っては困ります。そんなことを申上げては、あの御方は柳眉を逆立てゝ退社あそばすです」
「然し、君、社長と美人社員なら、先ず、そんなところだろう。なんにしても、本来、筋のよからぬ会社のことだからな」
「まア、まア、おやき遊ばすな。あなた方、病院内の生活はいざしらず、ヤミ屋の仁義は御婦人を手ごめに致さぬところにあるものです。かの御婦人は、我々の仁義を諒とせられて、目下、下情を御視察中のけなげなる美丈夫というものですよ」
「然し、思召しはあるだろう」
「それは、あなた、木石ならぬ我が身です」
「アッハッハ」
大笑一番、ふと私に盃をさして、
「これは面白い。ヤミ屋にくらべると、私らはヤボかも知れん。君らが物質的である以上に、私らはフィジカルだからな。私は君の会社へ遊びに行くよ。夏川夫人に御交際を仰ぎにさ。よろしく頼むぜ。敗戦このかた身辺ラクバクたるもので、とんと麗人の友情に飢えているから、千里の道を遠しとせずさ」