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ジロリのおんな
ジロリの女
前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页
思うに第一回目が最上の出来で、このときは気持に特別のハリがこもっていたせいか、却ってスラスラ、うまく呼吸もあい、ハデな珍演も湧出というていであったが、芸ごとゝいうものは本腰にかゝると全然ウダツがあがらぬもので、三日四日とだんだん自分のヘタさが我が目に立つばかり、自縄自縛というものだ。
ところでその何日目かのことであるが、私が大学の三年間、親の脛をかじりながら、安値に遊ばせて貰ったさる土地の、私のナジミの妓を抱えているのが土地の名題の姐さんで、金龍という、この姐さんがジロリの女であった。
私のナジミの妓は照葉という平凡な、いつも金龍に叱りつけられているような女だから、私が金龍姐さんのジロリを反撥し合って両々ソッポの向けっくらでも一向に気にもかけない。姐さんは我利々々の凄腕の冷めたくって薄情者の男だましの天才なのよと色々と内幕をあばいてきかせる。それが一々却ってその悪党ぶりに魅力をひかれるていであるが、まだそのころは、私はこれは他人だという、てんからきめこんだ構えがあるから、その魅力も、たゞきゝおく以上に身に泌みた情慾をかきたてるものとはならなかった。