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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页

青空文庫

すると金龍姐さんは案外にも、宴の終りに、この人はホンモノの幇間じゃなくて、大学生であり、こんど卒業だから、あなた方、カバン持ちにやとって上げなさい。あなた方も遊びが本職の仕事のような御方ぞろいなのだから、こんなカバン持ちも趣向でしょうよ、と云ってくれて、その場で就職がきまった。私はモーロー会社々長の秘書にやとわれたのである。おかげで、官費で遊べるようになったが、その代り照葉は社長の悪友にとりあげられて、甚だ貧しいミズテン芸者をあてがわれることになったのである。

モーロー会社はつぶれ、社長は雲隠れ、悪友どもゝ四散して、この土地に現れなくなっても、私だけは大学時代からの精勤であった。そして私は自然のうちに金龍姐さんの幕僚になっていたのである。

私は金龍にコキ使われ、嘘をつかれ、だまされ、辱しめられ、そして手切れだの間男の尻ぬぐいだのに奔走した。

私は然し平然として、腹をたてず、お世辞をつかい、惚れているが、思いがとげられないような切ない素振りをみせた。そうすることが、姐さんの気に入ることが、自然に分ったからである。

それは私の本心でもあった。金龍姐さんの凄腕や薄情ぶりには私もホトホト敬服していた。