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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页

青空文庫

私が酔わせもしたのであるが、衣子がより以上に酔いたい気持でいたのであろう。とゞのつまり、私たちは待合をくゞった。

私という男を衣子が愛している筈はなかった。むしろ蔑んでいる筈だ。酔っ払った衣子は、美代子なんかどうでもいゝのよ。死のうと、パンパンになろうと、もう、かまわない。私は私よ、と言った。ヤケクソである。四囲の様々な情勢がこゝまで衣子を運んできた筋道は理解がつくが、その四囲の情勢というヤツが、私が細工を施したわけでなく、その一日の運びすら私がたくらんだものではない。

私はいさゝか浮かない思いもあった。誇りをもつことができなかったからだ。私は自分の工夫によって、こゝまで運んできたかったのだ。

私は三人のジロリの女をモノにしたいと専念する。愛するが為よりも、彼女らに蔑まれている為である。私の気持はもっぱら攻略というもので、その難険の故に意気あがり、心もはずむというものだ。いわば三人の御婦人は私の可愛いゝ敵であるが、汝の敵を愛せという、まさしく私は全心的にわが敵を愛しもし、尊敬したいとも考える。

私はわが敵を尊敬したいから、そのハシタナイ姿は見たくない。