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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页

青空文庫

それは気品というものだろうか。私は自分が、下素なバカ者であることが、あさましくて、せつなかった。

私は自分が甘ったれているのだろうかと思った。自分が下素でバカ者だ、などゝは、甘ったれていることだ。けれども、私はそれで納得できるわけでもないのである。

私はいっそ衣子とのことを、ヤス子に白状しようかと思った。ヤス子に甘えているわけではないのである。そんなことで高まろうというわけでもない。要するに、何かしないといけないような気がし、圧倒されるからで、それ以外にどういうことでもないのである。

何か奉仕をしなければならぬ。私は夜毎、衣子を訪れるたびに、高価なオクリモノを忘れなかった。それも奉仕だ。衣子はそれを喜ぶ女だからである。けれども、ヤス子に対しては、奉仕する物の心当りがない。はては帰りの道々で、喋る言葉の奉仕すらもできなくなっている始末である。

昼はヤス子に逢い、夜ごとに衣子を訪れた。そして三日の慰安旅行が終って、大浦博士も戻ってきた。

その夕方、私はシラッパクれて、東京駅へ一行を出迎えにでて、やア、私は商用で、旅行にでられませんで、残念致しましたよ、ヤス子さんにも居残って手伝いしてもらいましたよ、捜査の方はいかゞでしたか、手がゝりがありましたか、と言ってやった。