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スモーリヌイにひるがえるあかはた
スモーリヌイに翻る赤旗
宮本 百合子
「大阪毎日新聞」1931(昭和6)年1月5日~21日号(15日号、19日号を除く)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,354 字 · 51 页
次に女房をなぐって、騒動で近所の子供の目まで覚させる。イワン・ボルコフは工場委員会に働いている。労働通信員。
「亭主は女房をなぐる権利をもっているのでしょうか?」
やっぱりこのスモーリヌイの婦人部の仕事で、農村の女を目標にいろんな講話会が開かれた。
これはそのとき送られた質問の一つだ。
スモーリヌイでは地階に大食堂がある。
働いているものが、みんなそこで食事をしたり茶をのんだりした。外から来たものでも四十カペイキでスープと肉・野菜が食える。
からりと開けはなされた大きい窓から、初夏の木立と花壇で三色菫が咲いているのが見えた。天井も壁も白い。涼しい風がとおる。――日本女は、婦人講習会員の間にかけて、黒パンをたべている。思いついて手提袋から、銀貨と白銅とを少し出した。それは日本のだ。
――これは五カペイキにあたるの、それが十カペイキ、そっちのが二十カペイキ……
手にとりあげて眺めながら、日本女のすぐ隣に坐っている女は黙ってそれを次に渡した。うけとって眺める。まんなかに穴のあいてる十銭を、裏表かえして見て、首をあげ視線をあつめてる仲間を見わたし、一寸肩をすくめるような恰好をして次へわたす。