轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
「改造」1931(昭和6)年7~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,656 字 · 110 页
モスクワへついて十五日目の、天気のいい昼まえだ。
――……だがどうもわからねえ。
モスクワへ着くなり、西も東もわからない信吉はすっかり李の厄介になっちゃった。住居権のことから、職業紹介所、住むとこのことまでして貰った。そして三日目にもう職にありついて、いい塩梅にこうやって働いてるんだが――わからねえ。
ソヴェトは労働者の国だ。働くものの天下だ。アルハラの山奥で松太がそう云ったし、信吉もバラックのロシア労働者ののんびりした自信ありげな様子で、それを感じた。
ところがモスクワへ来て見ると、そのソヴェトでも、決してみんな一様に暮してるんではねえ。
現に信吉はここで八時間一ルーブリ六十カペイキの煉瓦砕きをやっている。案外暮しは楽じゃねえ。
その信吉の目の前を立派な赤条入りの自動車にのった男が通って行く。しかし、下もあって、たとえば、あっち側の大きなパン店のところを見ろ。きっといつだって乞食の一人や二人ブルブルしながら立っているんだ。
なるほど、特別いい装をした男や女ってものはモスクワじゃ見当らない。シベリアを汽車で来る間に見ていたような男や女が、いそがしそうに一日じゅう踵を鳴らして歩いてる。