轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
「改造」1931(昭和6)年7~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,656 字 · 110 页
菩提樹の下にいつも夜じゅう出しっぱなされている一台の荷馬車の轅が、下の窓から庭へさす電燈の光で、白く浮上っている。ブーウ……隣の室で石油焜炉の燃える音がする。
おや、親爺今日は休みか……思う間もなく、クッシャン。嚔が出た。またクッシャン。つづけ様に嚔をした信吉があわててしっとり冷えたシャツの上へ上衣をひっかけていると、
「いいかね」
宿主の大坊主グリーゼルがのっそりと現れた。
やっぱり信吉ぐみで、シャツはカラなしだ。コーカサス製の上靴をひっかけてる。血管の浮出たギロリとした眼で信吉を見据えながら、
「ソラ、お前さんへだ!」
横柄に手紙みたいな書付をつき出した。
実のところ、信吉にとってこの親爺は苦手だ。というのは、こいつには、何だかほかのロシア人と違うようなところがある。親しみ難くて、この親爺の剃った頭とドロンとして大きい眼を見ると、腹ん中では何を考えているのかわからないという気がいつもするんだ。
信吉は、疑りぶかく手を出して手紙をうけとった。手紙なんて……一体、どっから来るんだ。――
親爺は、信吉があけてそれを見るのを突立って待っていて、
「何だね?」