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ズラかったしんきち

ズラかった信吉

宮本 百合子

「改造」1931(昭和6)年7~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,656 字 · 110 页

青空文庫

会費五十カペイキ出した。

きのうは食堂で国際赤色救援会の委員だっていう若い女につかまって、そこへも加盟させられた。一月五十カペイキだ。一週間のうちに、こういうのをもって来るからね、と、その女は自分の膨らんだ胸へくっつけてる徽章を見せた。鉄格子から手が出て赤い布を振っているところだ。世界じゅうの〔約五十字伏字〕。

こう続けざまじゃ、やり切れねえ。

信吉は思った。古くッからいる者だけが書きゃいいんだ。年の小さいピオニェールは、信吉にことわられて困った顔をしていたが、

「冗談じゃなくサア」

と云った。

「書くだろ? いくら?」

しつっこい。そう思った拍子に、

「俺らロシア人じゃねえ!」

※(感嘆符疑問符、1-8-78)

小さいピオニェールは、瞬間平手うちをくったような顔になって信吉を見てたが、ハッキリ一言、

「――お前、プロレタリアートじゃないってのか?」

ちょいと肩をゆすり、一人前の労働者みたいな大股な歩きつきで、行っちまった。

チェッ! 低い舌うちをして、信吉はやけに頭をかいた。何だか負けた感じだ。

なんだ! つい横じゃ、信吉の台から廻す締金の先へ手鑢をかけてるオーリャまで、こっち見て奇麗な白い歯だして笑ってる。