轻松读懂日语经典作品
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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
「改造」1931(昭和6)年7~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,656 字 · 110 页
戸口につめかけてる群集の中から刺すような甲高い子供の声がした。
「アレ! 父っちゃん。何さ? あの瓶? 何サ?」
「……黙ってろ」
グリーゼルと都合八本の酒瓶と三人の男は、無愛想に人だかりを分け階段を下りて再び行ってしまった。
忽ち、ヴィクトーリア・ゲンリボヴナが居住人に包囲された。
「みなさん、どうぞ静かに休んで下さい。グリーゼルは強い酒の密売で拘引されたんです。……知ってなさる通り、ソヴェトは勤労者の規律のために強い酒を売るのを禁じているんですから」
階段を下りかけて、彼女は、
「ああ、ちょっと」
と信吉を呼んだ。
「お前さんの室主は若しかしたら数ヵ月帰って来まいから、室代は直接住宅管理部へ払って下さい」
「――一本の歯になりゃその一本でソヴェトに噛みつこうとしやがる」
憎々しげに、隣に住んでるブリキ屋が室へかえりながら呟いた。グリーゼルは工場主で、革命まではこの大きい建物を全部自分で持って貸していたんだそうだ。
「土曜日だろう? 今夜は。……ソーレ見な。だから云うのさ、ニキータの婆さんだって今に見な、『軽騎隊』にひっかかるから」
ソヴェト同盟では、禁酒運動が盛だ。