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『ぐうぞうさいこう』じょげん

ゼエレン・キェルケゴオル

和辻 哲郎

和辻哲郎『ゼエレン・キェルケゴオル』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『偶像再興』序言、「自然」を深めよ、ある思想家の手紙、生きること作ること、院展遠望、樹の根、偶像崇拝の心理、自己の肯定と否定と、すべての芽を培え、創作の心理について、停車場で感じたこと、転向、霊的本能主義、エレオノラ・デュウゼ、ベエトォフェンの面、「ゼエレン・キェルケゴオル」序。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,567 字 · 212 页

青空文庫

元来肉体の老衰は、皮膚や筋肉がだんだん弾性を失って行くという著しい特徴によって、わりに人の目につきやすいようですが、精神の力の老衰は一般に繊細な注意を脱れているように見えます。しかしわが国では、文芸家や思想家の多くは、四十を越すか越さないころからもう老衰し始めています。これはおもに青春期の「教養」を欠いたからです。彼らは青春期の不養生によって、人間としての素質を鞏固ならしめることができませんでした。頭と心臓がすぐに硬くなりました。人間の成長がすぐ止まりました。彼らの内に萌え出た多くの芽は芽の内に枯れてしまいました。そこへ行くと夏目先生はやはり偉かったと思います。先生の教養の光は五十を越してだんだん輝き出しそうになっていました。若々しい弾性はいつまでも消えないでいました。

私は誤解をふせぐために繰り返して言います。この「教養」とはさまざまの精神的の芽を培養することです。ただ学問の意味ではありません。いかに多く知識を取り入れても、それが心の問題とぴったり合っているのでなくては、自己を培うことにはなりません。私はただ血肉に食い入る体験をさしているのです。